vol.12. 究極の開放感!ユーコン川3000kmを下る旅

2015年06月11日

2015年06月11日 09:21

今回のゲストは、1~2カ月をかけてカナダやアラスカの大河をキャンプや釣りをしながら、

カヤックで下るという旅をされている" オネエ系冒険家・海ちゃん "こと、海谷一郎

( 千葉県在住:以下Uさん )さんです。

私には、想像もつかない壮大な旅の物語。今日のインタビュー、本当に楽しみにしていました!!

インタビュアー 工藤( 以下、K )               2015年5月7日



* シーフィッシュ。北のターポンと呼ばれる、最大で1.5mほどになるゲームフィッシュ。ルアーによく反応する。身は白身で淡白。      2009年 アラスカのコバック川にて。



             * コバック川のあるキャンプ地。コバック川はアラスカの北極圏を東西に流れてベーリング海へ注ぐ川。2009


K:

海谷さんが、Youtubeにアップされている最近の旅の動画を見ましたよ。

あれはアラスカの川の河口とかでしょうか?



                       * アラスカのグレーシャーベイ。奥に見えるのは氷河。 2014

Uさん:

あれは、完全に海ですね。グレイシャーベイというところで。

南北に長くて、行ったときでは潮の満ち引きで約6mの差があるんですね。

また、森林が岸際までせまっていて、川みたいに映像では見えるのかもしれませんね。



                * グレーシャーベイ・ナショナルパーク内にある公営キャンプ場はコケの森の中にあった。2014


K:

へぇ~ そうなんですか。

その湾の中をカヌーで移動して、キャンプしてという感じなんでしょうか?



                     * カヤックとキャンプ道具。アラスカ・グレーシャーベイにて。2014


Uさん:

そうですね。

昨年、2014年の7月で、TULALA( https://tulalajp.com/ )のプロモーションを目的

とした約20日間くらいの旅でした。

晴れると素晴らしい風景なのですが、雨の日が多くて参りました。



                    * ザトウクジラのブロウ。アラスカ・グレーシャーベイにて。2014


K:

霧とかも含めて、雨は多いですよね、アラスカは。エリアによるとは思いますけど。

Uさん:

はい。

でも、雨は多いけど、初めてカヤックで冒険の旅をするには、とてもいい場所だと思いますよ。

K:

と、いいますと?

Uさん:

波は穏やかだし、ドロップオフ・ピックアップサービスというのがあって、

カヤックをいいポイントまで船で運んでくれたり、迎えに来てくれるというサービスで。

そして、釣りも楽しめますし。国立公園の中にあるのでレインジャーもいて、

安全面でもいいと思います。



                    * この船でドロップオフ・ピックアップサービスを行ってくれる。2014


K:

いいですね。そのサービス。



                     * ハリバット( オヒョウ )の子供。アラスカ・グレーシャーベイにて。2014


ところで、カヤックの旅を始められたのは、10年くらい前とのことですが

シーカヤックからスタートしたのでしょうか?

Uさん:

いや、最初はリバーです。ファルトボート( 折り畳んで持ち運べるカヤック )で2004年に

ユーコン川を下ったのが最初ですね。



                     * セスナからアラスカの原野を眺める。ユーコンの旅、2004~2005


K:

なるほど。そのきっかけは何だったのでしょう。それまで、国内ではやられていたんですよね。

Uさん:

いや、全然やっていなかったんですね。いきなりです( 笑 )。

K:

え~、そうなんですか。それまで、アウトドア的なことってやっていなかったのでしょうか?



                   * ジタバグで釣れた。ユーコンのパイクにはこれが一番効いた。2004~2005


Uさん:

釣りくらいですね。ルアー、フライ、エサ釣りなんかジャンル問わず

でちょいちょい。好きなように。

まあ、前々からカヤックとかやりたかったのはあったんですけど。

当時は仕事もきつくて、もう、やだーっていうのもあって。

それに失恋しちゃったりとかも重なって。

で、以前から憧れていたユーコンに行こうと。

カヤックもキャンプも経験したことがなくて、いきなりユーコンなんて

アタマ、大丈夫?って周囲からは言われましたけど( 笑 )。

親も猛反対で、大騒ぎでしたしね。



                     * パイク。フライで釣れた例。ユーコン川にて。2004~2005


K:

ははは~ 確かに、ぶっ飛んでますものね。

いきなりっていうことですが、ユーコン川を3000km下るっていうのが

想像つかないんですよね。特に、どうのように旅の段取りとかをするんだろうって。

Uさん:

大体は、想像ついていたんですね。野田知佑さんって方はご存知ですか。

ユーコン川を下られて、本とかも出されていて。それを読んで。

K:

はい、はい。ビーパルとかで、よく私も読みました。

Uさん:

例えば、川を下った最終地点では郵便飛行機に乗れば帰って来られることとか。

貨客線で、人も乗ることができて。辺鄙なネィテイブの村から、アンカレッジとか

フェアバンクスに移動することができるんですね。



                      * ユーコン川のキャンプ風景。2004~2005


K:

なるほど~

行きのスタート地点へはどのようにして行かれるのでしょう。

Uさん:

行きは、ホワイトホースというカナダのユーコン準州の州都だったので楽にふつうに行けました。

K:

行きと帰りはわかったのですが、1~2カ月もかけて川を下るとなると

相当な水とか食糧とか必要ですよね。カヤックに積める荷物の量には限りが

あるわけで。その辺は、どうなんでしょう?



                      * ユーコン川の風景。2004~2005


Uさん:

補給ですね。原住民が住む村に立ち寄って、補給・補給を重ねて。あと、水は川の水ですね。

K:

え! 川の水をそのまま飲んじゃうんですか?

Uさん:

本当はだめなんですけどね。後でわかったのですが、エキノコックスの感染エリア

だっていうことが。北海道では、キタキツネの糞とかを媒介して感染するという。

K:

危ないじゃないですか( 笑 )。体調、崩しませんでしたか?

Uさん:

全然、大丈夫でした。エキノコックスは、何年かしてから

症状が出る場合があるらしいですが、今のところ何にもありませんね。

K:

それは何よりですが。( みなさん、真似されないように!!)

ちょっと、話題を変えますが。

たぶん、海谷さんのこの記事を読んだ方々はみんな思うのは

1カ月以上、カナダやアラスカの川をキャンプしながら下って行く

という旅ができる人って、普段は、どんな環境で生活しているんだろうって?

Uさん:

それはもう、完全に。人生がそういうほうへフォーカスしちゃっているので。

K:

ははは~ 

どんな仕事をされているんでしょうか? ずーっと、フリーランスっていうことですか?

Uさん:

いや、バイト生活ですね。行くときは、バイトをやめて旅に出る。で、帰ってくるとバイトを探す。

私は、フォークリフトの免許を持っているんですね。

フォークリフトの免許を持っていると、すぐに仕事が見つかるんですよ。

まず、食いっぱぐれないです。長い旅をしたい方には、お勧めの資格ですね。

長時間労働・低賃金できついですけど。

で、ストレスがたまって、また海外へ行っちゃう( 笑 )。

K:

へ~、面白いですね~ また、ちょっと話を戻しますが。旅の話のほうに。

キャンプしながら、ところどころで釣りもしながら、ユーコン川を3000km

下ったということですよね?

Uさん:

そうですね。

ただ、長過ぎてひと夏で下れないんですね。

冬は結氷してしまうので、下れる期間が限られるということもあって。

ユーコン川は2004年に1500km 、2005年にその近くの地点から1500km。

2年かけて3000kmを下りました。

2004年は、カナダのホワイトホースから、アラスカのビーバーまで。

2005年は、そのビーバーより1つか2つ上のサークルというところから

下り始めて、河口の村のエモナックへ。



        * フランク・安田の墓。アラスカのユーコン川中流、ビーバー村の創立者にして日系一世。エスキモーのモーゼ。 

         彼の物語は新田次郎のアラスカ物語に詳しい。2005


K:

それは壮大な旅ですね~!!

先程、川沿いでところどころ原住民の村に寄るって話をお聞きしましたが、

どれくらいの頻度であるのでしょうか? 村は。また、どんな食糧を買うんですか?

Uさん:

川沿いに村があるのは、100km~200kmに一つくらい。

そこで主にお米とか日本のインスタントラーメンを購入するんですね。

インディアンが大好きで、どの村でも売っている( 笑 )。

ありがたかったです。日本人は困らないですね。




そして、川下りのキャンプ飯としても、インスタントラーメンは、

最強の飯だと思います。

K:

確かに、米とラーメンがあるのは心強い!

私なんかも、海外の秘境へ釣り旅に出かけて、日本に帰ってきた際には

まず、ラーメンとか食べたくなりますからね~

一人で川をキャンプしながら下って、ときどき村に寄って食糧の補給をしながら

数日滞在。そして、また下っていくというのを繰り返すわけですね。

Uさん:

はい。村への滞在は、1日だけということもありますし、面白ければ2~3泊したり。

大自然の中でのキャンプは魅力なのですが、村での人との交流がとても楽しくて。

川下りの魅力ですね、それも。



                      * 現地の子供らと。ユーコン川の旅。2004~2005


K:

原住民の方々の気質は、結構フレンドリーなんでしょうか?

Uさん:

そうですね。家でコーヒー飲んでけ、お腹空いているなら飯食ってけ。

今日泊まるところないなら、家に泊まってけ。ってな感じで。



             * キングサーモンのステーキ。エスキモーからの差し入れ。実に美味かった。ユーコン川の旅。2004~2005



                     * ムースの肉。少し臭みがあり固い。ユーコン川の旅。2004~2005


K:

そうなんですね。そういう現地の人との交流って楽しそうですね。

川下りの旅ならではって、感じで。

大自然の中で、悠々と流れる大河を数千km下っていくカヤックの旅。

現地の方々との交流も楽しみとのことですが、旅全体の時間の中では、

圧倒的に一人の時間が長いわけですよね。

海谷さんにとって、そんなカヤックの旅の何が一番の魅力ですか?



* 装備品。ライフルはまともに入手できないのでネイティブから中古品を購入。弾も店では買えないので、  

  現地で仲良くなった人に頼むことになる。剣鉈は最後の最後のクマとの格闘用。マッケンジー川・テズリン川の旅。2007


Uさん:

そうですね~

自由さが、たまらないですね~!!

何にも束縛されないという。本当にストレスフリーですから。



                       * マッケンジー川の風景。2007


K:

いいですね~!!

その自由さって、経験しないとわからないだろうな~

ところで、原野に一人っきりになりますが、通信手段とかはあるのですか?

Uさん:

特にないですね。衛星電話とか借りるのも高いですし。

ときどき寄る村に電話はありますから。家に電話でたまに無事を連絡したり。

それに原野にいるときに電話あっても意味ないですしね。

助けてぇ~!って言っても、誰もすぐには来られないし( 笑 )。



               * 寝てたらグリズリーが横切りました・・・。人生終わったと思った。マッケンジー川の旅。2007


K:

ははは~ そりゃそうですね。

ちょっと質問なんですけど。

それだけ原野で一人での長旅になると寂しくなったりすることはないんですか?

Uさん:

いや~ ないですね~

寂しさって、人がある程度いて、そこに入れないときとかに

感じるのであって。まったくの一人って寂しさって、感じないんじゃないですかね。



     * ファイヤーウィード。ヤナギランの一種。山火事のあと、山肌を癒すかのように真っ先に咲く花。原野の小さな看護婦たち。

       マッケンジー川の旅。2007


K:

そうかもですね~

私も海谷さんよりは、期間は短いですが

10日間前後の釣りの一人旅って、全然寂しくないですものね。

日本人は一人もいなくて、あんまり言葉も通じないけど

現地の人との交流もありますしね。

私の場合は、現地のフィッシングロッジのスタッフやガイド

だったり。海谷さんの場合は、現地の村人だったり。



                      * ジリス。あまり人を恐れない。マッケンジー川の旅。2007


Uさん:

そうですね。寂しさよりも、開放感のほうが強いかな。

やったー! 俺、一人! みたいな。

それと、自分ひとりしか頼むものがないって、いいですよ。

自分の判断を100%信じるしかないですからね。

それを間違えると命に係わるわけですから。

K:

危なかったな!っていう経験っていうのはあるんですか?



      * マッケンジー川1800kmが2カ月で終わったので、ユーコン川の支流テズリン川に来ました。写真はテズリンの上流部です。


Uさん:

あるって言えば、ありますよ。

川を下ってて、木がおいかぶさっているところとかあって。

突っ込んじゃうと、やばいんですよね。

で、そういうところに突っ込みそうなときって寝てることもあるんですね。

カヤックの上で。でも、はっと起きるんですよね。俺、起きるじゃんって。

俺、ちゃんとしてるじゃんって( 笑 )。



                     * キングサーモン。トローリングで釣れた。テズリン川の旅。2007


K:

動物的勘が働くっていう( 笑 )。

Uさん:

そういうことでも、自分への信頼感が芽生えたり。そういうのも楽しいですよ!

K:

自分への信頼感か~ いいフレーズですね!それ、いただきました( 笑 )。

なんか、カヤックの川下りの旅ってアウトドアの集大成みたいなところありますよね。

カヤック、キャンプ、フィッシングなど様々なことが包含されていて。

海谷さんの話を写真も見ながら伺って、ちょっと私も川下りの旅の気分を感じること

ができて、わくわくしました!

本日は、貴重なお時間。本当にありがとうございました!!

< 編集後記 >

いかがでしたでしょうか。

アラスカやカナダの大河をたった一人で1~2カ月をかけてカヤックで下る旅。

海谷さんは、その旅の魅力をたまらないくらいの自由と開放感と表現しました。

それは、体験した人にしかわからないことなのかもしれません。

ただ、話を伺っているだけでも、その感覚や香りのようなものを肌で感じられるような気がして

とても幸せなインタビューの時間でした。

また、「 原野での孤独は寂しくはない。頼むものは自分一人。それは、自分への信頼感が

芽生える体験であり、楽しみでもある 」という言葉がとても印象に残りました。

海谷さん、改めて、ありがとうございました!!

それでは、次回をお楽しみ!


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