vol.16 無欲の恵み84cm虹鱒!in カムチャツカ
2016年03月05日 17:00
今回のゲストは、土倉さん( 東京都在住:以下、Tさん )です。
カムチャッカの巨大ニジマスを中心に、カナダ、アラスカやニュージーランド等での
トラウトやサーモンの釣り旅について伺いました。
*土倉さんは、トラウトアンドキングさん( 海外釣り旅専門旅行会社:リンク参照 )に 紹介いただきました。ありがとうございました。
インタビュアー 工藤( 以下、K ) 2015年12月8日
K:
今日はお忙しい年末にお時間いただいきまして、ありがとうございます!
まず、直近の海外釣り旅。今年2015年夏のカムチャッカの話を聞かせていただけますでしょうか。
Tさん:
素晴らしかったですね~
ジュパノバリバーという川で、現地のロシア人のガイドのナザーが「この川は世界一の川なんだ。」と
自慢するだけあって、ニジマスは最高ですね。ベスト・レインボー・エバーですね。
*PKカムチャッカ近郊の空港から、Zupanova RiverのLodgeへロシアの名物ヘリコプターで飛行。乗り込むと第二次世界大戦時代の映画を雰囲気を味わえ、なんともエキゾチックであった。
*これは、帰りのヘリコプターから見えるZupanova River。こんな原野の雄大な川で毎日釣りをやっていたのか。
この自然あってのあの魚なのだ。
*ロッジの前庭のヘリポートに着陸するとライカ犬のお出迎えを受ける。この犬が宇宙を初めて飛んだ地球の生物なのである。
勇敢で熊に吠えて追い立ててくれる。その後どれだけ我々釣り師を守ってくれたことか。
2日目のことですが、これが80cm(雌 )。ガイドも震えていました。今年最高の1尾だと。
*人生初めての80cmのレインボー。夢がかなった。嬉しくてかなわない。こんな大きな物量と重さのレインボーがいるなんて。
一体どれほど栄養が豊かなのか。
K:
うわぁ~ いいですね~ 美しい!
*ロッジ。ロシア版合掌造りという佇まい。
*川から活火山を望む。白い雲のような物が噴煙。カムチャッカ半島は火山が多数ある。島自身が火山が海から空に突き出しているようなもの。ニュージーランドといい、ワシントン州といい、チリといい、アイスランドといい、地震や火山の多いところが鱒や鮭の名産地なのはどうしてなんだろうか?
Tさん:
そして5日目最後の日なんですが、午前中は余り釣れずにがっくりで、気づけばもう昼食の
時間に。川のほとりでBBQをやるんですけど、もっと釣りをしたいという感じで。
ただ、そこで一緒に合流したテキサスから来たMikeが2日前にその同じ場所の小さな川の
流れ込みに、ランチを待っている間に軽く流してたら75cmが釣れたという話を聞きまして。
*テキサス・カウボーイとモンタナ・ガール
よっしゃ、もうおらんだろうけどやってみようかと。ランチができるまで気軽な気持ちで岸からフライを流して
みようと。すると、最初のキャストでまず小さなガリエツ( ドリーバーデン )が釣れて。
まぁ、簡単には大物は来ないはな~と思いながら・・
その後もう少しだけ遠くに3投目を投げると。。。何かしらガツ~ン!と来たんですね。
大きな魚らしいのが。それがえらい引いて、糸を出していくので、一体何が釣れたの?と
見当つかないのですけど。それがこの旅の中での最高のフィッシングだったという。
*ロッジからZupanova Riverを眺める。
K:
その気軽な気持ち、無欲が結果的にはよかったんでしょうね。
Tさん:
結果的にはそうなんですが、釣り上げるまでは大変だったんですね。
川の真ん中でキングサーモンのような魚がド~ンとジャンプして、大きな水しぶきを上げてる!
えっ!もしかして、これは今俺が掛けている魚?って。嘘だろ!でも本当であってほしいと。
それで必死にリールを巻き上げるとその魚に繋がっている!
やったー!神様この魚釣らせてください!と(心の中で叫びましたね。)。
相棒のVinceは" Holly sit ! "、" Huge pig ! "と声を上げ、もう周囲は大騒ぎになって。
さっきのテキサス・コンビや岸でBBQの網の上で魚を焼いていたガイドの2人もそっちのけで駆けつけて
きましたね。そして、私含めみんなも異様な興奮状態に!
こっちは走る大物のすごい引きに泣きそうになりながら必死にくらいついている状況なわけ
ですが、こんなにオーディエンスに囲まれての釣りで魚をばらしたら最悪やな~という
思いも頭をよぎり・・・上げればヒーローと称えられ、ばらせば残念だったなと慰められながら笑い話
にされる( 笑 )。
そうして、ガイドのGregの次々飛んでくる指示の通りに絶対するぞとやりとりしながら、
右や左に逃げる魚は下流で待つもう一人のガイドのAlexyのネットに、やっとのことで入りました!
K:
一生の思い出ですよね!
Tさん:
そうですね~ 大感激です!本当にラッキーでした。
そのテキサスのMikeとTimやVinceからは、お前はレインボー・マスターだと呼ばれたりもして( 笑 )。
ただ、一つ残念だったのはですね。
前日に大きいクンジャ( アメマス )を釣ったんですが、私が魚の両端をつかんで写真に撮ってもらおうと
したら、手からすべって逃げてしまったんですね。雨マスって肌がツルツルにぬめってるんで。
それをGregが覚えていて、私に魚をホールドさせてくれない(笑)。
*やっとアメマスが釣れた。そんなに大きくないかもしれないがすごいうれしい。
虹鱒( ミキージャと呼ぶ )、シロザケ、アメマス( クンジャと呼ぶ )がここ の三大フィッシュなのである。
ネットに入ったのを、ガイドがその魚を持ってまず写真を撮りまして。
その後、俺に抱かせてくれってお願いしたけどだめだって言うですね。
だから、私がその84cmのニジマスを抱えた写真がないんですよ。
K:
確実に写真に残そうというガイドの配慮ですよね。
Tさん:
はい。それもあるんですが、ガイドが言うにはお前じゃなくてもいいだろう。
ヒロシが釣ったのは誰もわかっている。
アレキシス( ガイドの一人 )が抱えたいい写真はもう撮れたんだし。
これ以上、ホールドすると魚が傷む。確実に生き残るように放してやれっていうことで。
*ガイド達。彼らのプロフェッショナリズムと献身がないとこれらの魚はとても釣れなかったろう。
K:
なるほど~ それは意識の高いいいガイドたちですね。ちょっと、残念だなって思いますけど。
*ガイド達がランチのBBQの準備中に、岸からほんのそこに流したフライにいきなり見えない大きな魚がくらいついた。川の真ん中でキングサーモンのような大きな魚がジャンプして大きな水しぶきをあげた。Wholly cow!メキシコ系アメリカ人が叫ぶ!クッキング中のガイド達は本職に戻る。すさまじい力で右左に逃げる魚をルーミスの7番ロッドは弓のようにしなって押さえるが、岸に寄せようとすると、リールのドラグを鳴らして川下に逃げていく。こっちも体半分川につかりながら、泣きそうになりながらも食らいつく。グレッグのシャウトする声が聞こえる。その通りにする。アレクシスがネットをつかんで川下で待つ。やっとのことでネットに入った虹鱒は84cmと今回最大だった。神に感謝する。この魚をネットに入れることができたことを。グレッグは私が魚をつかんで落とすこと、魚を傷めることを心配して写真撮影はアレックスに魚を持たせ、私には持たせなかった。もう魚を水に帰そうと。その魚を敬うグレッグのプロフェッショナリズムと愛に私は異存はなかった。
Tさん:
はい。
でも結果的には80cmオーバーを3尾も釣ることができて、もう十分に幸せだな~っと。
今まで80cmを超えるビッグ・レインボーを釣りたいとカナダ、ニュージーランド
北海道、アメリカ、アラスカと釣り歩きましたが、最大はアラスカで釣った65cmだったんですね。
やっと、長年の夢が叶いました!
*三日目に釣れたシロザケ。最初に針が掛かったときはてっきり根がかりかと思い、はずそうとすると、とてつもなく大きいものが動き出した。一体何が掛かってくるかわからない。レインボーとは動きが違う。必死に格闘して水面に姿を現したのは白鮭だった。こんなに重たいシロザケは初めて。全ての魚種がここではとんでもなく大きいようだ。この川の豊かな栄養によるのだろう。
それと今回ちょっと学んだなと思うことがあって。
そのロッジのルームメイトで世界中で釣っているベテランのアメリカ人のビンスが、
「 俺は30インチ以上のニジマスを釣りに来たんだ。だからそれ以下には興味がない 」
って言うんですね。そんな彼は数は釣るんですが、結局1尾も30インチオーバーを
上げることはできなかったんですね。25インチまでの魚は何匹も釣るんですけど。
そうしたら、その日の夜にナザーいわく。
「 ヒロシ、お前は大きさに関わらず、何が釣れても喜んでいただろう。
そういう奴には川が大物を釣らせてくれるんだよ 」
そういうものかな~と。感謝しかないですよね。
そりゃあ、こっちは50cmでも60cmでもうれしいじゃないですか。
そのアメリカ人のベテランは、そのくらいのサイズだと写真すら撮らないんですよね。
*川の中州で鮭を食べているロシアの熊。ボートの近くから眺めると、ライカ犬がワウワウ吠えて、大きな熊が逃げていく。
せっかくのランチ中を追われた熊にとってはカムチャッカ版「中の島ブルース」というところだろう。
K:
いい話ですよね~ 何かわかりますね。
私の例で恐縮ですが、40歳くらいの頃に大物を釣りたいという欲を手放したんですね。
サイズに関わらず、美しい野生の魚が釣れれば十分に幸せじゃないかと。
そうしたら、途端にいい釣りができるようになったという記憶がありますね。
これは精神論ではなく、そういう欲がないとリラックスして余裕を持って釣りに臨めるからなんじゃないかと。
がつがつして大物を釣りたいということばかり考えていると、ろくなことにならない( 笑 )。
Tさん:
そうかもしれませんね。
先ほどのテキサスから来たMikeはあっちではブラックバス釣り師でトラウトもフライフィッシングも初めて
なんですね。その彼がよく釣るんですよね。80cm級を3尾上げましたから。虹鱒以外の白鮭やアメマスも
でかいのを。初日からボキボキとTimから借りたSAGAの高いロッドを折りながらも。で、二日目で
2本目も折ってもへこむどころかワッハハーって二人で豪快に笑っているんですよね。
たぶん彼もそこでの釣り全部を楽しんでいて、無欲だったんだろうなって思いましたね。
ボートからも遠投せず、すぐ近くを流した方が釣れるって(笑)。
結局80cmクラスを釣ったのは私とテキサスのそのマイクとティムの二人だけで、前述の30インチ以下は
興味ないと言ったアメリカ人と他の世界中の憧れの釣り場を回っているベテラン勢には
その恵みは訪れなかったんですね。不思議なものですよね~
*釣り人たちとの記念撮影。
*ロシアの食事は美味い。美味くないものに出会ったことがない。
*最後の夜のキャンプファイアー。感無量の一日。
K:
そうですよね~ 素晴らしい野生のニジマス釣りの話、ありがとうございました。
ところで、ちょっと話は変わりますが、土倉さんと釣りとのそもそもの出会いは
どんなものだったのでしょうか?
Tさん:
そうですね。子どものとき、家に来る大学生のお兄さんがいまして
宝塚の川や釣り堀に連れていってくれて楽しかったなっていう
薄らと覚えているのですが、それからはずっと釣りとは無縁だったんですね。
K:
そうだったんですか。それが世界あちこちに釣りに行かれるようになったのは
大人になってから?でしょうか。
Tさん:
はい。社会人になって、ニューヨークに転勤になりまして。
ブラックバスをやってみたいと思い立って。ちょこちょこ近くの湖に行って、
エサ釣りでトライしたんですが全然釣れない。
その頃、開高健の「オーパ、オーパ!!」を読みまして、「グッドニュースリバーというところで
いい話があります。キングが入って来ました。チャンスです 」とガイドが言って開高さんはその支流で
釣った巨大な魚を抱いて「円は閉じた」とか言うわけですよ。
こんな魚がアラスカでは釣れるのかと。憧れましたね~ これやってみたいなと。
K:
はい、はい。僕ら世代の釣り師は、開高さんに影響受けている人は多いですよね。
私もその一人です。
Tさん:
あんな痛快な話はないですよね。世界中旅して大きな魚釣って、うまいもの食べて。
北米アラスカのベーリング海峡から南米のフエゴ島まで行っちゃうんですから。
これはやらんといかんと思いましたね~ その辺で小さなブラックバスを狙って
一喜一憂している場合じゃないって。
K:
ははは~ ですよね~
Tさん:
その後、ニューヨーク滞在中にカナダに足を伸ばす機会がありまして。
カルガリーに到着してレンタカーでバンフ国立公園に入り、NYの友人と大きな船に乗って
イワナを釣ったり、馬に乗ったり、ラフティングをやったりといろいろ楽しんだんですが、
最後にジャスパーのマリンレイクというきれいな湖で初めてガイドを雇って釣りをしたんですね。
で、マスを釣るためにゴムボートに乗ってまるで絵のような美しい湖に漕ぎ出して。
周囲にはロッキー山脈や氷河が迫るように壮大な風景で、岸でムース( ヘラジカ )が水を飲んでいたり。
なんてきれいなんだろ!って思っていたときに、ぐぐっと竿がしなって。
そのときの派手なジャンプと引きと、釣れたブルックトラウトやブラウントラウトの美しい模様は感動的で。
こんなに引くのか、こんなに楽しいのかと。そして、こんなきれいなところにそんな力強い魚がいるのかと。
本当に釣りの面白さにはまったのはこれがきっかけでしたね。
今度は、ニューヨーク州の北のほうにサーモン・リバーという川がありまして。
オンタリオから遡上するキングサーモンがいるということで。
「ええつ!アラスカじゃなく、ニューヨーク州にキングサーモンが遡上するなんて!そりゃ、行ってみないと!」
とまた他の日本人の友人に声かけて一緒に出かけました。
現地に到着すると、川の両岸にずらーと電信棒のように果てしなく釣り人が並んでいて異様な雰囲気に
なってまして。その両岸の人の列の間を背びれを立てて無数のキングサーモンが群れで牛の行列のように
ぶわ~って上がってきていて。私もびっくりして興奮してしまって。もうその川も町もみんな
サーモンフィーバーでおかしくなっている( 笑 )。
K:
ははは~ で、釣り人たちは、どんな方法で釣っていたんでしょうか?
Tさん:
それがいわゆる引っかけ釣りなんですね。鉛の錘がついた太い3本フックで。餌なんてつけない。
みんな、川の真ん中の群れに向かってがんがん投げる。で、魚に掛かると
「フィッシュ・オン!」って叫ぶんですね。
それで、そうかこれか。開高さんが言っていた" フィッシュ・オン "ってこのことかと( 笑 )。
で、とにかくやらせてくれということで私たちもトライしました。
キャスティングを繰り返して、それがそんな簡単に針がかからない。しばらくやって、やっとのことで
フッキングしたキングサーモンはすごく重たくて引き上げるのが大変だったんですが。苦戦の末に、
私のいる岸に近づいて水の中でゆらゆらと揺れるキングサーモンを見たときはまるで
潜水艦の魚雷のようだなと。
K:
ははは~ さらにはまるわけですね。
Tさん:
そうですね~ トラウトを釣り、そしてサーモンを釣って。
本格的な釣りの世界に入ったんだなと感じましたね。
K:
それは、いつ頃のことでしょうか?
Tさん:
それは1987年の秋だったと思います。
K:
へぇ~ 現在まで28年の軌跡、さらに興味が湧きますね~
奇遇ですが、私の初の海外釣り旅は1988年( カナダ )なのでほぼ重なっていますね。
その後の展開はどんな感じでしょう?
Tさん:
その後は帰国して、国内にいたときは釣りからは遠ざかっていまして。
飲み会やらテニスやらで。で、帰国後1年でまた海外勤務で今度はロンドンに赴任。
イギリスに滞在するんだったらフライフィッシングを覚えようかと。ロンドン郊外にあるスクールに行って
管理釣り場のようなところで教えてもらうんだが、これが全然上手くいかない( 笑 )。
K:
ははは~ 難しいですものね。
Tさん:
飛ばないし、なんなのだと。ロンドンの郊外の川のあるマナーハウスに泊まって、飛ばない
フライをようやく投げても何も起こらない。持ってたパンをちぎって投げても何も起こらない。
これは魚がいないんだと、皆で昼寝してたら、夕方になったらそのパンがフツ、フツと消えて
いる。急いでフライにパンつけて投げたら皆入れ食いで、立派な鱒で興奮しました。
他の人にばれる前にすぐやめましたけど。フライって釣れないじゃんって(笑)。
その後、また帰国した後は鹿留や御殿場の東山湖などの管理釣り場に行って。そこで貼っている60㎝くらい
の虹鱒の写真見て驚いて。これはどのルアーで釣ったんですか~?って聞いて買って投げてみたけど、
そんなでかい魚は全然釣れなくて。30㎝超えたら嬉しくて写真撮ってました(笑)。
でも、マルミフィッシングエリア( 茨城県 )で私にとっては大きな出会いがあって
国内でも初めて大きなトラウトが釣れるようになったんですね。
K:
ほ~ それはどんな出会いだったのでしょう?
Tさん:
その釣り場は、50cmクラスのドナルドソンというニジマスが大量に放流されているんですね。
サンスイで勧められた道具を揃えてチャレンジしたのですが、これがまた全然釣れない( 笑 )。
ところが、ふと釣り場の風車が回っているポイントを見ると大物をばんばん釣っている
方がいるんですね。びっくりして、どうしてそんなに釣れるのかとその方( 渡辺さん )
にたずねたんですよ。
K:
それは興味ありますね~ 秘密は何だったんですか?
Tさん:
で、見せていただいたルアーはバッセルルアーといってアワビの貝殻の内側の
きらきらした部分を貼り付けてあるんですね。このルアーを使ってみますか?と
おっしゃるのでぜひぜひとお借りして、自分のロッドでトライしたんですね。
これが最初はあたりがあってもなかなかうまくは釣れない。
そうしたら、この私のロッドも使ってみてくださいということでロッドまでお借りしまして。
そうしたら・・・
K:
来ましたか?
Tさん:
はい! どんどん当たりが出だすんですね~。でももう少しのところで逃すんですよ。
ロッドはワンピース( 継ぎ竿ではない1本竿 )でティップが全然違うんですね。
これはビックリしましたね~ ルアーとロッドとかの道具でこんなに違うのかと。
この出会いは大きかったですね~.で、次は柿田川の管釣りにバッセルの竿買って行って
投げたらいきなり一投目で大きなブラウンが釣れてついにやったぞと!もう嬉しくて。
やっと俺もでかい鱒を釣ったぞと。
それからはマルミフィッシングエリアにしょっちゅう行って、40cmオーバー、50cmオーバーの大物がやっと
何匹も釣れるようになりまして。すっかり病みつきに( 笑 )。
そして段々と自信がつくと釣りの雑誌にアラスカでサーモン釣った人の話が出ているのを何度も食いいる
ように読んで。お前のアラスカの鮭の夢はどうなったんじゃ?と(笑)。
再び海外に行ってみたいと思うようになってきて。また、先程お話したバッセルルアーの渡辺さんのご自宅に
行くとカナダで釣ったという70cmくらいの大きなニジマスのはく製が飾ってあって、こんなのをぜひ
釣ってみたいと。
国内で大物が釣れるようになったと言いましたが、管理釣り場がメインの話で自然の湖などでは
バッセルルアーを使ったにせよ、そうそういい釣りはできませんしね。
釣り人は多くて、魚は少ないですから。それに比べてアラスカ、カナダやニュージーランドにせよ、
カムチャッカにせよ、釣り人は少なくて、しかも魚影は濃いですからね。
K:
はい、はい。海外釣り旅の一番の魅力はそこですよね。
で、次に行かれた海外はどちらでしょうか。
*フロートセスナから見たアラスカの風景。 2000年8月
Tさん:
やはり、アラスカだろうと。
開高さんの影響もあって、憧れのキーナイ川でサーモンを釣ろうと。
で、2000年の夏休みにアメリカの釣りの旅行会社フロンティアに頼んで現地に行ったら、
川を埋め尽くすように釣りのボートが並んでいて。ワールド・フェイマス・キーナイに行けば
釣れるかと思いきや、全然釣れない( 笑 )。
女の竿ばっかり曲がっていて、男はがっくりうなだれて帰るとか、90%の釣り人は釣れずに帰るとか、
開高さんは著書に書いていたけどそんなことはないだろうと思ってチャレンジしたのですが、
まさにそうで( 笑 )。普通のサイズの虹鱒が釣れただけで。
K:
ははは~ 厳しいですね~
Tさん:
はい。ガイドがここはダメだということで上流にいい湖があるというのでそこへ移動して。
そうしたら、そのときに同行したルアーが得意な私の友人は調子よく2~3尾のシルバーサーモンを
釣りまして。「トクちゃん、写真撮って~」って。「あ~、よかったね~」って撮ってあげて。
すると「また釣れちゃった~ 撮って~」が続いて、釣れない私はもうええかげんせーよって( 笑 )。
K:
ははは~
Tさん:
その後、その湖の岸からキャスティングで再トライしてやっといいサイズのレッドサーモンを釣ること
ができて、やっと夢のサーモン釣りがかなったという。
*アラスカ、キーナイにて。レッドサーモン 2000年8月
それから、釣り以外の話ですが、その時に泊まったロッジでのディナーは世界各地から来た
釣り人と酒を飲みながらわいわいと釣りについて語り合う時間となって。
これは楽しい世界だな~って思いましたね。
K:
それ、わかります。その日の釣果から、それぞれの国での釣りについてとか
釣りという万国共通のテーマで盛り上がりますものね。
Tさん:
そうなんですよね。
で、その鮭釣りに話を戻しますと。次にキーナイのロッジを後にして、水上セスナに乗ってアラスカの
原野の中へ深く飛んで、シルバーサーモンが釣れるという奥の川へ・・・水上セスナが川に降りると、
川の上流からにエンジンボートが波をけたててこっちに飛んできて我々のお迎えに。
お~、何だ!このジェームスボンドのような世界は( 笑 )。
*水上セスナ、アラスカにて。 2000年8月
K:
ははは~
Tさん:
ボートでまた川を上流にすっ飛んで行くと、岸の崖の中腹にロッジがあってそこのドックに到着すると、
主人やガイドと犬が迎えに来てくれてようこそと。宿泊するのは私とその友人の二人だけで。
何か、今日の俺たちは全然かっこいいじゃんみたいな( 笑 )。
これは釣れそうと。他のボートや釣り師は誰もいない。
K:
ははは~ で、釣りのほうはどうでしたか?
Tさん:
ガイドが大学生のお兄さんだったのですが、これが若いんだけどなかなか優秀で。
あのポイントに投げろっていうので、そこへ目がけてキャスティングする。
そうすると、2投目で初のシルバーサーモンが釣れて感激。その後も入れ食いなんですね。
シルバーサーモンが!
ルアー投げてもフライ投げても。もう飽きて1日早めにアンカレッジ戻ってゴルフでもしようかと
いうぐらいに。未だにあんなにシルバーが釣れるところはなかったです。
*アラスカにて。シルバーサーモン 2000年8月
いや~ 来てよかった~ これだ!と、アラスカは。これで、海外釣り旅に味をしめて。
K:
いいですね~ その後はどこがよかったですか?
Tさん:
ニュージーランドですね。マーリーという名ガイドがいて。
K:
その方の名前はいろんな方から聞きますね。
この海外釣り人インタビューで登場いただいた折茂さんや渡辺さんからも。
Tさん:
お客さんに釣らせる能力とそのアプローチ、そして自然体な人柄。プロフェッショナルですね。
その価値はまさにプライスレスで。初心者であろうが、見事に釣らせるんですよ。
一緒に行った私の友人がフライをやるのが初めてだったんですが、ちゃんと釣らせましたから。
K:
へぇ~ 本物のガイドってそういう方なんでしょうね。
Tさん:
はい。ただですね・・・
ガイドは何とか最初の1尾をフライで友人に釣らせることができたわけですが、
その後もつきっきりで指導しているので、どんどん釣れてくる。フライをつけるのも網に入れるのも
全部マーリーがやって、彼はそこで竿を上下に振ってるだけ。
マーリー!ジュン!とお互いが叫びあって喜んでる。周りで釣ってるニュ―ジーランド人も釣れなくて
しらけている。私もなんだか釣れなくなってきて。おいおい、ちょっと待てと( 笑 )。
K:
ははは~
土倉さんは放置しておいても大丈夫って思われたんですね。
*レインボートラウト、ニュージーランドにて 2008年8月
Tさん:
友人とガイドは、きゃっきゃっと言って楽しそうにやっているわけですよ。
同じガイド料払っているのに何だよって( 笑 )。
さすがにその友人も悪いと思って、ガイドに土倉さんのほうも面倒見てって
言って、それでこっちに来てもらってアドバイスを受けたら、私ももう1尾、2尾かけて助かったんですが。
でも、結局最後はその友人が60cmオーバーの大きいニジマスを釣り上げまして。
地元のマオリ族の子供たちからはスーパースター扱いになって、この魚を家に持って帰ってもいいかと( 笑 )。
*友人のジュンさんが釣った、レインボートラウト60cmオーバー、ニュージーランドにて 2008年8月
K:
ははは~ 微妙ですね~
Tさん:
そこで一つ学んだのは・・・
友人は俺はヘタだからと無欲で言われた通りにロボットのようにやってる。すると来るんですよね~
一方、私はこれぐらいわかっとるわいとか思ったり。釣れないと場所を変えたり。でも心の中では焦ってる。
すると、だめなんですよね。で、この辺に答えがあるのかなって。
K:
なるほど~ それは大きなヒントかもですね~ なんかわかりますね。
そして冒頭のカムチャッカの話に通じていますよね。で、無欲の勝利を目指して、お次は?
Tさん:
カナダはバンクーバー島のキングサーモンの遡上を狙おうと。次の年にまたジュンと行きました。
面白かったのは私がいつも先行で釣れて、ジュンが追い上げって感じでして。
day1からday2は私が先にいい釣りをして彼を慰めてたら、day3あたりからジュンが怒涛の追い上げで。
何度も一緒に釣りに行くとキャラクターが出てくるんすよね。
いい感じになってきてday4で一気に追い上げてくる( 笑 )。
*カナダ・バンクーバー島にて、キングサーモン 2009年9月
K:
いいですね。そういうご友人がいて。
Tさん:
話がお互いに合うんですね、そのジュンさんとは。
そもそも釣りを教えてくれと頼まれて、私からいろいろアドバイスしたんですよ。
まあ、素直なやつで言う通りに初めからバッセルの竿やいいリールやベストなど釣り具を揃えて、
最初にマルミフィッシングエリアに連れて行って。教えた通りにキャスティングして。
そうしたら、いきなりもう2匹ほど釣ってるんですよ。
たくさんの人を連れていきましたが、最初はそういう大物は釣れないじゃないですか。
俺の今までの苦労はなんだったんだって( 笑 )。
K:
無欲、そして素直は強い!?
Tさん:
そうなんですよね~
国内では、もう行くところはないのでニュージーランドへ行こうと誘ったら、
はい行きますって。で、いきなり大物釣って地元でヒーローになっちゃう。
彼からは釣り行こうとか誘われたことないんですね。すべて受け身ですから。
でも、釣れちゃう。本当に、恵まれているな~と思いますね。
それにラインの結び方は知らない。フライの名前も覚えない。竿もラインのサイズも
良く分からない。ガイドがつきっきりで全部面倒みるから、それでも釣れちゃう。
「 土倉さん、海外って楽ですね~ 全部やってくれるから 」って言うんですよ。
普通は、自分でやるもんだって。お前はどこぞのロイヤルファミリーかって( 笑 )。
K:
ははは~
そうそう、バンクーバー島ですけど。私も一度だけ行ったことがあるんですが
その時のターゲットはスティールヘッドで。今度はキングサーモン狙いでぜひ行ってみたいですね。
Tさん:
魚影濃いからいいと思いますよ。
スティールヘッドと言えば、2013年に行ったアラスカはブリストルベイのロッジの
ガイドに紹介されたんですが、ワシントン州のボガシエルリバーっていうところで。
そこでもアラスカのオフシーズンにガイドをしているから来ないかと誘われまして。
一週間キャスティングを繰り返して1本上げられるかどうかみたいな修行のような釣りはしたくないって
言ったら、1日に1~2尾は釣れるよって言うのでじゃあ、ぜひぜひということで2014年の2月に行ってきました。
その時のスティールがこれです。
*ワシントン州のボガシエルリバーにて、スティールヘッド 2014年2月
K:
お~ いいですね~
Tさん:
釣りは素晴らしかったんですが、天気は毎日どしゃぶりの雨で寒くて参りましたけどね。
バンクーバー島もそうですが、このワシントン州のこの辺のエリア( フォークス・ワシントン )は
バリューだと思いますね。川幅は細くて魚に届きやすい上にスティールもキングも上ってきますしね。
シアトルやバンクーバーの町からも近いですからね。費用面でもリーズナブルで。
アラスカの奥地に行かないと釣れないっていうわけじゃないんですね。
K:
なるほど~
まだまだ我々が知らない、いいエリアやポイントがあるんでしょうね。世界は広いですものね。
ところで、そういった思い出に残るフィッシングも素晴らしいけど、先程お話しされていましたが、
海外釣り旅は世界中の様々な国から釣り人が集まるから、滞在したロッジでの会話や雑談は
面白いですよね。
私はそんなに英語が話せるわけではないですが、ワンワード・イングリッシュで
十分にコミュニケーションンが楽しめますしね。
Tさん:
本当に楽しいですよね、ロッジでのディナーの時間の会話は。共通語は、英語ではなく" fish "なんだと
思いますね。金持ちだろうとなかろうと、年齢も釣りのキャリアも、そして国も関係なく魚遊びに
狂っているわけですからね( 笑 )。
ロッジに泊まっていい魚を釣って、それを釣り人たちと夜飲みながらシェアして。
こんな幸せってなかなかないですよね。私は趣味が多くて、ラリーだ、ヨットだ、ゴルフだ、
ドラムだと色々やってきましたが、一つだけ選べと言ったらやっぱり釣りですね。
K:
私もまったく同感です! 生まれ変わってもまた釣りがしたいくらいです( 笑 )。
今日は、長い時間楽しい話を本当にありがとうございました!
完
< 編集後記 >
釣りを始めたころのまったく釣れない話から、やっと釣れるようになって釣りに開眼していく土倉さんの
釣り人生の軌跡。そして少し年下のご友人ジュンさんとの釣り旅珍道中の様子もとてもリアルにかつ
面白く聞かせていただきました。
そのジュンさんの、無欲・素直、そして自然体の釣りとの付き合い方はおそらく土倉にも知らず知らずの
うちにいい影響を与えていて、カムチャッカのあのニジマスを引き寄せたのかもしれませんね。
今後ともお二人で楽しい釣り旅をお続けください。改めて、土倉さん。ありがとうございました!