vol.5 初釣行で20ポンド超、スティールにはまる
2014年08月03日 21:22
vol.5は、東京都在住の渡辺さん( 以下、Wさん )です。
Vol.2の折茂さんにご紹介いただきました。
なんでも、小柄な女性ながら、大物のスティールヘッド( 降海型のニジマス )を釣る旅を
続けておられるとか。それを聞いただけで、わくわくしてしまいました。
そして、ぜひお会いしてみたいとお願いして、このインタビューが実現しました。
初のレディースアングラーの登場。ご期待ください!
インタビュアー:工藤 ( 以下、K ) 2014.7.3
* 26ポンド( 約12㎏弱 )のスティールヘッド。渡辺さんにとって、Life time fishだそうです。カナダのキスピオックスリバーにて。
K:
本日は、お忙しいところ、ありがとうございます。早速なんですが。
あのフェイスブックのプロフィール写真のスティールヘッド。すごいですよね!
Wさん:
あれは、私にとってはライフタイムフィッシュですね。
K:
私は、1988年に初めて海外の釣りに行ったのですが、スティールヘッド狙いだったんですよ。
よせばいいのに。国内では、バスしかやったことがないのに。
いきなり、難易度高いスティールに挑戦して玉砕でした( 笑 )。
Wさん:
どちらの川だったんですか?
K:
カナダのスキーナ水系のキスピオックスリバーです。
Wさん:
そうなんですか。あのプロフィール写真の魚は、キスピオックスで釣ったんですよ。
* 大きなスティールヘッドが釣れることで知られるKispiox River
K:
へぇー、素晴らしい。私は、一度それで心折れて。
そこから、しばらくは太平洋サーモンを中心に海外に行ってまして。
1988年から16年後の2004年にカナダのバンクーバー島で
再挑戦して、やっとスティールヘッドを釣ることができました。
私にとって、憧れの魚の一つなんですよね。
いきなり、テンション高くスティールヘッドの話から聞いてしまいましたが、
そもそも渡辺さんが釣りを始めたきっかけって何だったんですか?
そこらあたりからお話を聞かせていただけますか。
Wさん:
私、リバー・ランズ・スルーイットの子です。
そういう世代なんですね。1993年に日本で公開になって。あれ観て、私、映像屋でしたから。
なんじゃこの美しい映像は!もう、これだ!っと思って。で、フライフィッシングを始めたんです。
リバー・ランズ・スルーイットがきっかけでフライフィッシングを始めた私達の同世代は多いはずです。
K:
なるほど、そういうことなんですね。
Wさん:
ブラピとかは、どうでもよくって( 笑 )。フォルスキャストの、あのラインの美しさ。
あれで、一気にやられてしまって。これは、ちょっとやってみたいなと。
K:
で、最初はどこに釣りに?
Wさん:
管理釣り場ですね。鹿留( 山梨県都留市 )の川かな。そうしたら、いきなり爆釣してしまって。
まわりの上手な人とかは釣れてないのに。これは続けてやるっきゃないと。うぬぼれて。
K:
その爆釣の理由は何でしょう。センス?ですかね。
Wさん:
いやいや、違いますね。偶然です。たまたま使ったフライが当たっただけ。
これで、はまりました。そして、その翌年に初の海外。いきなり、モンタナに行っちゃったんです。
K:
ほ~。
Wさん:
で、そこで釣りのガイドに、メンディングとは何かとか、初歩から教わったんです。キャスティングも。
何だ、キャスティングできないじゃんって言われて。朝ご飯の1時間前にロッジの外の芝生で
キャスティングの練習です。魚のデコイみたいのを目印に( 笑 )。
リーチキャストの特訓もしました。ガイド様様ですね。今、考えれば。
* Healing Waters Lodge この芝生でキャスティング練習
K:
よく私も話すんですが。国内でも練習にはなるんですけど、
海外に行くと釣りだけに集中できるからいいですよね。
Wさん:
最高ですね。それに昔は、インターネットとか携帯も無かったですし。
釣りに行ってしまえば、仕事に追っかけられない。今でも、インターネット環境の無い釣り場が多いし、
昼間は出かけてるんで連絡取れませんって会社に言えるじゃないですか。
仕事から逃避するには最高ですね。
K:
わかりますね~
ところで、モンタナはどんなロッジだったんでしょうか。
Wさん:
ヒーリングウォーターズロッジっていうすごく素敵なロッジがあって。
名前もいいでしょ。癒しの水のロッジ。
当時渋谷にあったフライショップの社長というか、代表の方にタックルの相談とかを
していたんですね。
で、その彼が「モンタナにヒーリングウォーターズロッジという
素晴らしいロッジができたよ。来年にでも行ってみたら」って言うので、
行ってみたんですよ。オープン2年目に。
ロッジも素晴らしいけど、ガイドもよくって。
アメリカインディアンみたいな風貌なんだけど、実はイタリア出身なの( 笑 )。
考え方もすごく素敵で。
* お祈りをしてから川に入るガイドさん。最初の数年、彼に釣りのあれこれを教わりました。
K:
ルックスもいいんすね。イケメンで。
Wさん:
ていうか、自然に溶け込むようなタイプ。川に入る前にお祈りするんですよ。
「 私達は、この川から何も奪いません。何も傷つけません。ただ、ほんのわずかな時間、
あなたの抱えている宝物のお魚をちょっと見せてください。今日は、日本からこんな素敵なレディ
( オバチャンとは言われない・笑 )来ているので 」って。
こんなことも含めて、やられちゃったわけ。これはいいわって。
こういう感性って当時の日本にはあんまりなかったと思うのね。
そして、その通りにするわけ。何にも傷つけないし。何も奪わないし。まさにフライフィッシングの心というか。
毎朝、違う川に行く度に、まじめにお祈りするのね。パフォーマンスじゃなくて。
K:
いい話しですね~。それと、精神性もあるけど、北米のガイドたちはユーモアもありますよね。
アラスカで釣りをしていて、根掛かり( 釣り針が川底などにひっかかること )
してロッドをあおっていると、ガイドが「 Fish? 」って聞いてくる。
それで、「 No ! 」って言うとガイドは、「 Oh ! It's Alaska 」とか、「 Earth 」とか言ったり。
つまり、今お前が釣っているのは、地球だという。
Wさん:
そうそう。よく、言いますよね。さすが、でかいの釣るな~なんて。
K:
で、そのロッジは何度か行かれたんですか。
Wさん:
8年連続で行きました。最初のオーナー夫婦が、一度そこで引退したんですね。
若い方に売ったわけ。その後も、一度は行ってはみたんですが、何か雰囲気が違って。
それから、あんまり行かなくなっちゃいました。
あとでお話ししますが、その離れた時期にニュージーランドの釣りにはまっていたこともあって。
実は、その後お客が離れてロッジの運営がうまくいかなくって、
もう一回そのオーナー夫婦が戻ったので、その後に二度行きましたけどね。
モンタナは、その他にミズーリ川のほとりにあるミズーリリバーサイドロッジ
に何度も行きました。こっちは体育会系のロッジで。ようやく去年、そこのオーナーは結婚したんですが。
以前は朝、昼、晩の食事の支度から、釣りのガイド、犬3匹の世話まで、何でも一人でやっていた人で。
ベッドメイクと掃除だけは、近所の子ども達にアルバイトでやらせていたけど。
そんなんで、ガールフレンドもできないから、結婚もできずという具合でしたね。
* ミズーリを釣る時の拠点、ミズーリリバーサイドロッジ
でも、実に居心地がよくて。おまけに、そのオーナーがものすごく釣りがうまいわけ。
身長2mくらいの大男なんだけど。キャスティングも見てて惚れ惚れするくらい。
ただ、残念なことに、彼もリタイヤを決めたようです。
* ミズーリリバーサイドのオーナー、身長2mぐらい?
K:
ロッジもさまざまなんですね。ところで、モンタナの魚はレインボーがメインでしょうか?
Wさん:
比較的、レインボーが多いですね。ブラウンもいますけど。あと、モンタナのビッグホールっていう、
すごく渓相のいい川があるんですけど。その上流にワイズリバーっていう支流があって
そこは、グレイリングも釣れるんですよ。
* 魚は小さいけれど渓相抜群のBig Hole River
K:
へぇー、北米のその緯度にもいるんですね。アークティックグレイリングというくらいで、
もっと北だけにいるイメージでした。
Wさん:
サイズは小さいですけど。釣れると、ガイドも大喜びですよね。きれいですしね。
K:
そうそう、背びれとかも大きくてきれいですものね。
で、モンタナの次にはまったのがニュージーランドってことでしょうか?
Wさん:
そうですね。先程、お話したようにモンタナのヒーリングウォーターズロッジの
オーナー夫婦が一度引退した時に、何か納得いかなくなって。違う釣りもしたいなって思っていて。
フライフィッシングフェスタって昔あったじゃないですか。トラウトアンドキング( 海外釣り旅専門旅行会社 )
さんのブースが出ていて。12月の頭くらいのころだったと思います。で、その代表の方に。
冷やかし半分で、この年末にニュージーランドなんかに釣りに行ける?って聞いたわけ。
そしたら、フライトも取れます。ガイドも押えましたって言われちゃって。
そう言われたら行くしかないわなって。完全に冷やかしだったんだけど。
K:
は、は、は~
Wさん:
で、行ったわけです。ニュージーランドの南島に。そしたら、私、運がいい人みたいなのね。
釣りに関しては。最初に、83cmのブラウントラウトが釣れちゃったんです。
* 初めてのNZ南島釣行で釣れてしまったモンスターブラウン
で、ハマったワケ。それから、ニュージーランドに通うようになって。
最初に行ったエリアとは、違うエリアに落ち着いたんだけど。
モンスターブラウンのハンティングみたいな釣りにはまっちゃったんですね。
10ポンドを超えるブラウンがいるなんて思ってもみなかったし。そのスぺシャル感みたいなのが、
ニュージーランドの南島では有り得るんだなって。
* NZ南島 Twizelの渓相
そういった大きい個体は占有するテリトリーがものすごく広いから歩いて、歩いて、歩いて。
その一尾を探すんですね。一日に相当歩いて。少ない日は、一日に3~4尾しか魚が見つからないわけ。
K:
面白いっすね~
Wさん:
でも、こういう釣りって、人と一緒に行くわけにいかないんですよね。
3尾しかいないんじゃどっちが釣るのって?
* 超美形のNZモンスターブラウン
K:
ちょっと、険悪になりそう( 笑 )
Wさん:
そうなんですよ。3尾いても、3尾釣れるわけじゃないし。
ファーストキャストで釣れって、言われるんですよ。例えば、Aさんと2人で行ったとして、
最初に見つけた魚に私がキャストしてスプーク( * )しちゃうとします。
2匹目の魚にAさんがキャストして同じくスプークしちゃう。
じゃあ、3匹目は誰がキャストするの?難しすぎますよね。
* 魚が警戒して、動かなくなったり、逃げてしまうこと。
とういうことで、一人で大きいブラウン狙いに行ってました。
* NZ南島、川に行く途中の朝霧
K:
そこは、何ていう川なんですか?
Wさん:
ガイドとの約束で秘密なんです。そのガイドが大事にしているんですね。
そうそう、ガイド曰く、モンスターブラウンは一度釣られると2週間記憶が抜けないそうです。
で、ニジマスは4時間くらいで忘れちゃう。食い意地張ってるから。
実際、朝釣ったニジマスが、その午後にも釣れちゃったりするんですよ。
* NZ南島でお世話になっている熱血ガイドのMartin
K:
本当ですか~、初めて聞きました!
Wさん:
だから、仮に私が11月にそのモンスターブラウンの居る川に行くと予定している場合には、
ガイドが私を連れて行こうとしているエリアには、その2週間前からゲストを入れないんですね。
K:
へぇ~。すごいスペシャルですね。面白いな~。
* これまたGood Condition のモンスターブラウン
私も一度だけニュージーランドに行ったことがありますが、北島ですけど。
何か、オープンな感じで秘密の川があるというイメージが無いんですよね。
Wさん:
北島はオープンですよね。魚もたくさんいますし。大らかな気持ちで釣りができますね。
二度ほど行きましたけど。
南島は、全然違うんですね。場所にもよりますが。
氷河もあって、冬の寒さも厳しくて。水温も冷たい川が多いですね。
それと、北島はどちらかというとレインボーが多くて南島はブラウンが多いですね。
* NZ北島のガイド( マリーさん )とクッキー
K:
アラスカとかで、氷河を削って流れてくる川って、ミルキーウォーターと
いって、濁りがあったりするじゃないですか。南島の川って、ミルキーウォーターなんでしょうか?
Wさん:
そういう川もあるし、クリアな流れの川もあります。
マウントクックから流れてくる川とかはミルキーウォーターです。
で、ミルキーウォーターの川はどちらかというとサーモンリバーが多いのかも。
私はサーモンはあまりやらないですが。
今までお話してきたように、モンタナからちょっと足が遠のいて、
ニュージーランド通いがしばらく続いていたわけですが。
ある時、スティールヘッドの釣りに誘われたんですね。
K:
おっ、いよいよスティールヘッドの話題ですね。あーっ、わくわくします。
Wさん:
カナダにバビーンという有名な川があって。
* 朝日が射し込むBabine River
K:
あー、知ってます。有名ですもんね。川にロッジが一つしかないんでしたっけ。
Wさん:
3つあります。私が行っているのは、一番上流にあるバビーン ノアレイクスロッジですが、
その下に一つ、そのまた下にシルバーヒルトンロッジというのがあって。
ともかく、スティールヘッドの場合、圧倒的にリピーターが多いんですね。
K:
リピーター優先でなかなか入れないって聞きますよね。
それと、リピーターが釣りに行くと翌年の予約をするとか。
Wさん:
そうなんですよ。私が行けるようになったのも、毎年行かれているある日本人の方が都合で行けなく
なって、お仲間からお誘いを受けたんですね。
それで、私、釣りの誘いを断る習慣がないもので( 笑 )。うん、行くって。すぐ言っちゃって。
* 夜のBabine Norlakes Steelhead Camp ここはスティールヘッド熱病症候群患者の隔離病棟です。最高っ!
K:
いいっすね~!
Wさん:
ダブルハンドのスペイキャスティングじゃないと難しいよって、言われて。
バックスペースの無い川だから。
そんなことやったことないし、そんな道具も持っていなかったのね。
で、何買えばいいのか教えてね。って、ところから始まったわけ。
9月に行く予定で、その年の1月にタックル買って、スペイキャスト教えてもらって。
釣り仲間2人がかりで。月に2~3回くらい練習させて貰ったんです。
* ヘリから見るBabine。岸がほとんどなく、川の両サイドに森が迫っているので、スペイキャティングが必要です。
K:
へぇ~、そんな長いロッドで、どこで練習したんですか?
Wさん:
多摩川です。ウエットフライのスイングの釣りとか、ほぼ経験無しなので、
その流し方のコツとかも教えてもらって。
K:
そうなんですか。面白いな~
* 毎年一緒にBabineに行く、スティールヘッド仲間たち
Wさん:
それで行ったわけ。で、またしても釣り運が!
K:
ありますからね~、はい。それで、それで?
Wさん:
行って、2日目だったかな、20ポンド( 約10kg弱 )オーバーのスティールヘッドを釣っちゃったの!
20ポンドオーバーのスティールヘッドというのは、スティールヘッダー( * )が
一生に一尾釣りたいっていう魚なんですね。
* スティールヘッドを専門に狙う釣り人のこと。
K:
すごい!
* Babineでは、ロッド2本、ランチボックス、ドライバッグを持ってボートから降りたら、あとは自分一人で釣りを成立させます。
Wさん:
ニュージーランドの83cmのブラウントラウトも、私のライフタイムフィッシュ
なんですね。一生に一度も釣れない人のほうが多い。
で、20ポンドオーバーのスティールヘッドも、一生に一度釣りたいと思って
通っていらっしゃる方が大勢いるんですって。
それが、2日目に釣れちゃったわけ。
K:
で、またはまっちゃった( 笑 )
* ドライフライのバブルヘッドを咥えたスティールヘッド
Wさん:
そうそう、幸いなことに数も釣れましたし。
私にスティールヘッド行こうよって、声かけてくれた方は今年でスティールヘッド歴
22年の超ベテランの人なんですけど、誘われて以来。
「渡辺さん、ずるいよね。僕より、必ずいっぱい釣るよな」って。
なんかね。運がある。
楽しくってしょうがない。おっしゃるとおり、はまっちゃいました。
* バカでかいネットとバカでかいスティールヘッド
K:
はっは~、素晴らしい!
で、最初に行かれたのは、何年前くらいのことなんですか?
Wさん:
6年前ですかね。
K:
わりと最近なんですね。それから毎年行かれているわけですね。
Wさん:
今は、春と秋に行ってます。年に2回。
K:
へぇ~、それはすごい。
* BabineのチーフガイドのDarren
Wさん:
春はバビーンではないですが。バビーンのロッジのチーフガイドが
スキーナ本流のテラスというエリアに一昨年、ロッジを開業したので。
春はそちらに行っています。とっても素敵なロッジですよ。
* こんな立派なロッジに一組だけのゲストを迎えてくれるのです。
春は、数はあまり釣れないんですけどね。遡上の始まりで、まだ遡上してこない時とかがあって。
そうすると魚いないですから。贅沢なキャス練ですよ。一週間、ひたすらキャスティング( 笑 )
今年春なんて、実は一尾もランディングしてないんですよ。
スキーナ本流で一回フッキングしたんですけど、1.5秒くらいの間かな。
300mくらい先でジャンプして。そのまま、さよなら。
*Spring Steelhead は海に近いSkeena本流なので、ピカピカのクローム色の超元気なスティールが釣れます。
K:
以上って感じで、厳しいですね。強運の人も、そんな時もある( 笑 )。
Wさん:
それと最終日の前日に同じ場所に行ったんですけど。
そこでも、フッキングしたんですね。そしたら、竿ごと持ってかれました。
K:
えー!すべったんですか?
* Springにお世話になるSteelhead Houseのオーナーカップル( Darren & Missy )そしてワンちゃん( River )と一緒に
Wさん:
違うんです。私、握力が無いんですね。8kgぐらいで、6歳児並みらしくって。
K:
それで、よくあんな大きい魚釣れますね。びっくりです。
Wさん:
すごかったですよ。竿が水しぶき上げて走っていきましたから。
まるで、水上スキー。それで、150 ~ 200m先で潜水艦のように
潜っていって。すごいスピードで。
K:
スチールヘッドの恐るべきパワーですね。
8kgの握力でチャレンジしている渡辺さんも恐るべし、ですが。
それと冒頭のキスピオックスの大きなスティールヘッドですが、
あの重い魚をよく横にして、支えて写真撮れましたよね?その握力で。
*真ん中が私のウェーディングシューズです( Kispioxにて撮影 )
Wさん:
握力というか、手が小さくて実は持てないんですね。尾っぽの根っこの
ところをつかみきれない、とどかないから。
だから、水の中で、横たわらせることしかできないんです。
K:
そうなんですか。でも、何か、あれがかっこいいんですよね。
ちょっと、不発弾処理っぽいけど( 笑 )。
Wさん:
あの魚の写真は、あれ1枚しかないんですよ。
撮った1秒後には水しぶきあげて去っていきましたから。
K:
なるほど。そういういい写真が撮れるのも運があるという
ことかもしれないですね。
* Spring に釣りに行くSkeena River 本流
私にとってのライフタイムフィッシュは80cmオーバーのレインボートラウトなんですが、
写真撮れなかったんです。アラスカのイリアムナ湖に注ぐニューヘレンリバーという川で、
ボートの上からのキャスティングだったんですが20分くらいのファイトの末にやっとランディングして。
岸にボートを寄せて、ボートから降りて魚を抱えて。ガイドに初めて写真を撮ってもらうことになって、
カメラのボタンはそこじゃないとか、やりとりしているうちに魚が元気になってきたようで。
一瞬、魚がジャンプして。その際にラインが岩にあたってプッツン。
魚はルアーをくわえたまま、猛スピードで消え去りました。
今でも悔しい~って思いますね( 笑 )。
Wさん:
私も同じようなこと、ありましたよ。カメラを用意するのに手間取っていたら、
大きな尾びれで、ぱーんって、帽子をはねとばされて。一瞬で魚は消えました。
もう、大笑い。
* 去年の9月、Kispioxで20pound over を2本釣った中のひとつ
K:
そうですか~、あるんですね、そいうことって。
今年の秋も行かれると思いますが、どんなスケジュールで、そしてどんな気分で
いつも釣りをされているのでしょうか?
Wさん:
4日間くらい、キスピオックスリバー。中1日移動日で、そのあとにバビーンに。
というパターンですね。気分は、文明から隔離された強制収容所みたいな暮らし。
スティールヘッド熱症候群患者の幸せな強制収容所生活ですけどね。
中1日の移動日には、スミザーズという小さな町の日本食レストランに寄って。
そこの日本人シェフに裏メニューのミニ海鮮丼つくってもらって。元気出したりはしますけど。
* Smithersの日本食レストラン、裏メニューの海鮮丼ミニ
K:
なるほど~
今は、海外釣り旅は春と秋のカナダ、スティールヘッド狙いのみなんですか?
Wさん:
去年は、4月にスティール、9月にスティール、12月にニュージーランドに
行きました。
今年は、4月にスティールに行って、8月にモンタナとワイオミング、9月にスティールに行く予定です。
ニュージーランドは思案中。
K:
ほ~。今年、4回になるかもしれないってことですよね。すごいな~。
Wさん:
ニュージーランドの南島のいつも行く川が、大きいのが釣れそうという情報が入って。
マウスイヤーになりそうなんですって。今年か来年かわからないけど、今年の可能性が高いって
いう話がガイドから来ちゃって。
K:
行くっきゃないですね。
あっ、マウスイヤーっていうのは何ですか?
Wさん:
9年か10年に一回なんですけど、小さなネズミが大繁殖するんですね。
ネズミというか、実はモグラらしいですけど。普段は、水生昆虫とかを食べている魚がそれを食べる。
すごい栄養価なわけじゃないですか。魚というか、肉食動物のようですよね。
で、より魚が大きく強くなるっていうことのようです。
エリアごとに時期が違うんですが。その、私がいつも行く川が
今年それなんじゃないかと。
K:
心穏やかじゃないですね~
Wさん:
これ、過去のマウスイヤーに釣ったブラウンです。
* マウスイヤーの巨大ブラウン( 約12ポンド )
K:
すごいですね~、こんな背っぱりのブラウンなんて初めて見ました。
また、こんなブラウンを求めて行くしかないでしょう。
Wさん:
どうしたものかな~、悩むな~。。。困ったな。。。
K:
行きましょうよ~!!
完
< 編集後記 >
一般的には、一生に一度釣れるかどうかという大物をいくつも釣り上げている渡辺さん。普通だったら、
そういう話って、ちょっと嫌味に聞こえるかもしれません。それが嫌味どころか、なぜか聞いている私も
ハッピーな気持ちになってしまう。なんとも痛快で明るいお人柄。素晴らしい!また、インタビューは終始、
抱腹絶倒の笑いの絶えない楽しい時間でした。渡辺さん、本当にありがとうございました。
ブラウントラウトやスティールヘッドの大物釣りの話も面白かったのですが、もう一つ印象的だった話は、
フライフィッシングを始めたきっかけが、一本の映画を観たことだったということ。
私もそうですが、今まで登場していただいた方々も映画だったり、テレビ番組や書籍だったり。
何らかのメディアを通して、自分の心に響いたことがきっかけになっているケースが多いということは新たな
発見の一つでした。この記事を読まれていて釣りをされている方。あなたのきっかけは何だったのでしょうか?
一度、アンケート調査してみたいものです。さて、今回はこのへんで。次回もお楽しみに!