vol.3 ターポンを釣って男になれ! in コスタリカ

2014年07月01日

2014年07月01日 07:00

vol.3のゲストは、昨年2013年のアラスカ釣行でご一緒した、Uさん( 徳島県在住 )です。

お住まいが徳島県ということで、今回は私からアンケートを送付。

それに対して、原稿用紙20ページに及ぶ長文の感動的なお手紙をいただきました。


                                                                                                           * 魚はターポン。コスタリカにて。( 2011年5月 )

そのお手紙を一読すると、、、

還暦近いお年から釣りを始められて、それから10年余り

海外の様々なところへ釣行しているとのこと。

釣りを始めたきっかけは?の質問に対して、「20才前後に愛読したヘミングウェイの小説の釣り

の描写にずっと惹かれていたのも原因の一つかもしれません」と語っておられました。

心の中に抱えていた静かな憧れが、実に約40年の時を経て熟成。

釣りへの一歩を踏み出したのかもしれませんね。

また、原稿全体を通して、まじめなお人柄を感じる丁寧な文体ながら、釣りへの情熱が

じわじわと伝わってくるのを感じました。

過去2回の直接お会いしてのインタビューとは趣が異なるとは思いますが、

Uさんの味わいのある文章( 読書家で、特に釣りに関する本を多読されているそう )

をなるべく活かして構成しようと思います。これはこれで、釣り人のリアルな心情が

表出して面白いのでは。ご期待ください!

そして、今回の膨大な文字数のお手紙を1回でご紹介するには無理があると

思いましたので、2回に渡ってお届けします。


まず、初めての海外釣行のニュージーランドの鱒釣り。

カナダのクイーンシャーロット島のキングサーモン、オーストラリアのバラマンディ、

メキシコ・ユカタン半島のボーンフィッシュ。

そして、コスタリカのターポンフィッシングまでをご紹介します。

( 次回は、まだ秘密です・笑 )


【 ニュージーランド~レインボートラウト、ブラウントラウト 】

海外釣行の経験のある友人に誘われて、正月休みにニュージーランド( 北島 )の

鱒釣りに出かけました。

私( Uさん )にとっては、これが初めての海外釣行です。

エサ釣りの釣りを始めてわずか4か月。

フライフィッシングについては、出発2週間前にはじめてフライロッドを手にして

友人の指導でキャスティングの練習を開始して臨みましたが、ずい分とまいどいました。

そんな全くの素人でしたが、ガイドの手助けで良型を含む何尾かの虹鱒を

釣ることができました。



2002年、2003年と同じ場所に行ったのですが、

2年目は少しフライロッドの扱いにも慣れてきたようです。

ヘミングウェイの小説「河を渡って木立の中へ」の情景を彷彿とさせる

ロケーションも堪能しました。




                                                                              * ニュージーランド北島:トンガリロリバー 


2005年12月には、ニュージーランド南島のクライストチャーチへ。

関西空港からの夕方5時発出発予定の飛行機( ニュージーランド航空 )が

エアコンの故障が理由で夜10時まで待機されるも、結局運行が中止。

空港近くのホテルで一泊し、翌日の夕刻の出発となりました。

( 工藤コメント:

釣りに限ったことではありませんが、海外釣行でありがちなトラブルの一つが交通機関に

関係するものです。避けようのないことがほとんどなのですが、できれば旅の前後に日程の

余裕を持つことをお勧めします。

参考:海外釣り旅Q&Aの8番目~海外釣り旅のリスクについてを参照ください )




結果、釣りの日程が一日少なくなったことが残念でしたが

この釣行では、初めてブラウントラウトを手にすることができました。



そして、2006年と2007年の12月には、ブラウントラウトのメッカと言われている

ニュージーランド南島のマタウラへ単独釣行。

2006年12月、日本びいきで腕利きのガイドであるデビッド宅に5日間滞在し、

彼の尽力でブラウントラウトの釣りが堪能できました。

数日前からの雨で本流が増水。そのために、支流や山の湖での釣りに。

また、強風が吹き粉雪が舞う日もありましたが、そんな時は風裏に案内されて

釣りができました。

自然条件に応じて魚のいる場所や状況を熟知し、そこに釣り客を案内するという

ガイドの力量が、いかに釣果に関係するかを実感した旅でした。

2007年12月も、再びガイドのデビッドの自宅に滞在。鱒釣りを楽しみました。

今回、本流で釣っている時、針掛りした鱒が30mほど一気に下流に走るということが

ありました。ようやく取り込んだ鱒は、シートラウト( ブラウントラウトの降海型 )

だと教えられました。



その後、クイーンズタウンに移動。この地のガイドの案内で周辺の河川やクリーク

での、虹鱒釣りとなりました。何kmも歩き、ようやく見つけた虹鱒に静かに近づいての

キャスティングというスタイル。

ガイドは高校の生物の教師で夏休み期間中は時々、釣りのガイドをしているとのこと。

彼の案内で、この地でもきれいな鱒を手にすることができました。



【 カナダ・クイーンシャーロット島 ~ キングサーモン、シルバーサーモン 】

2004年8月。バンクーバーから、ほとんどがアメリカ人の釣客が乗る50人余りで

満員のチャーター機でクイーンシャーロット島へ。

島の小さな空港から、さらにヘリコプターのピストン輸送で30分ほどのロッジへ到着。

客は月曜日にチェックインし、土曜日にチェックアウトする。1週間単位で夏期のみ

このシステムが繰り返され、釣り客を送迎している。

2002年、2003年と2回のニュージーランド北島の釣りを同行した友人との釣行で

ボートからニシンを餌にした海の釣りでした。

今回は、サーモンの結構な数釣りができました。

その中でも、最大は48ポンド( 約22kg )のキングサーモン。

取り込むまでに20分以上かかりましたが、何とか釣りあげた時の

ガイドの興奮した態度から、すごい魚なんだと喜びがじわりとこみあげてきました。




また、こんなびっくりするようなことも。

針掛りしたサーモンとのやりとりの際、突然強い力にひっぱられて激しくリールが逆転

し、道糸がほとんどなくなりました。

何事が起っているのか理解ができなかったのですが、70mほど前方の海面に

巨大な牡牛ほどのトドが立ち上がるように半身を現したのです。

その口には、大きなサーモンがくわえられていました。

急に軽くなった道糸を回収すると胴体を食いちぎられたサーモンの頭のみが残っていました。



( 工藤コメント:

海外釣り旅の魅力の一つに、大自然の中での野生動物との出会いがあると

と思います。トドがサーモンを食いちぎるというほどの壮絶なシーンを

目撃したことはないのですが、アラスカの原野では白頭鷲、グリズリー、ヘラジカや

ビーバーなどなど。思い出に残っています )

釣ったサーモンは、1日2尾のみキープ。それ以上はリリースが規定でした。

キープしたサーモンは下船後にすぐに捌かれ、切り身になって真空パックの

状態で冷凍されて日本に空輸されます。重宝なお土産となりました。


【 オーストラリア ~ バラマンディ 】

2007年5月、オーストラリアのウェイパで、2回目の海のフライフィッシング。

( 工藤コメント:

Uさんは、2006年5月に初めての海のフライフィッシング

としてターポン狙いで、メキシコのユカタン半島に行かれたのこと。

5日間でベビーサイズのターポンを1尾のみ針掛りするも、ジャンプ1回で

ばらしてしまうという厳しい旅だったそう。

今回、お手紙のこの旅のパートは割愛しますが、次のように語られています。

『 風が吹き、しかも不安定なボートからの瞬時の判断とキャスティング。

魚が見えても思うところにフライが届かない。随分と勝手が違う。自分の

キャスティング技術の未熟さに失望しながらの釣り。しかし、現場では

今さらどうしようもない。1年に1~2回の海外釣行の時しかフライロッドを

使用しないのではこの程度の技量であるのは当然とわかっているが情けない 』、と。

海外の釣りも、いつもいい思いができるわけではない。

悪天候などの自然条件などの不運もあれば、求めた魚に対して経験やスキルが

まだ追いついていなかったということもあるでしょう。

でも、こういった悔しい残念な結果でも先々には一つの思い出になりますし、

それがバネになって釣り人は再チャレンジの旅に出ることにもなります。

Uさんは、その後、見事に後述のコスタリカでターポンを釣り上げています )

今回のオーストラリアは、バラマンディ狙い。

このために、室戸沖でシイラを相手にフライロッドを使い、少し練習をして

旅に出ました。幸い数尾のバラマンディをキャッチ。ルビーのような赤い目が

印象的でした。




たまたまロッジの夕食にバラマンディのホイール焼きが供されたが

淡白で香ばしく、日本のスズキ以上に好ましい味に感じられました。


【 メキシコ・ユカタン半島 ~ ボーンフィッシュ 】

2010年5月、ボーンフィッシュとターポンを目的に、メキシコ・ユカタン半島のアッセンションベイへ。

ターポンは釣れませんでしたが、念願のボーンフィッシュのジェットラン( * )を

楽しむことができました。

* ボーンフィッシュはフッキング( 針掛かり )すると、ものすごいパワーとスピードで水中をダッシュするとのこと。通称、ジェットラン   と呼ぶそうです。




珊瑚礁の浅瀬を、魚をさがしてボートで移動していく時、太陽、雲、風などの変化で

海の色が澄みきった青や緑に微妙に変化していく様を眺めているのもこの釣りの楽しみの一つでした。



ロッジは周辺の村から離れているため電気が通じておらず、自家発電で客が

部屋に滞在している夕方5時から朝9時までの間だけ、電灯やエアコンなどの

使用に供されていました。

また、このため冷蔵庫では、冷却のためには氷を使用。

シャワーの水は雨水を利用するという具合でした。

夜、停電があった時。ローソクを灯して戸外で復旧するまで、2時間余り

談笑しながら過ごしていました。その際に、まわりを木々に囲まれた真っ暗な闇の

中で空を見上げると、こんなにもたくさんあったのかと驚くほどの無数の星が

輝いていたのがとても印象に残っています。


【 コスタリカ ~ ターポン 】

2011年と2012年は、ともにターポン( * )を求めてコスタリカへの旅。

開高 健 著「 オーパ、オーパ!! コスタリカ篇 」を何度も読みかえし、

ターポンへの期待は強いものがありました。

( 工藤コメント:

ターポンは、体長2m以上、体重100kgを超えるまで成長する巨大魚。

また、太古よりその形状を現代まで変えることなく生き延びた古代魚とも

言われています。釣り人の憧れの魚種の一つです )

2011年5月。ビッグトラウトさんという旅行会社に手配をお願いしての単独行。

夜遅く首都サンホセに到着して市内のホテルに一泊。翌日の早朝、セスナ機で

ジャングルの中のロッジにやっと到着しました。

自宅を出発してからすでに40時間余りが過ぎていました。

時差ボケと睡眠不足の状態で用意されていた朝食を食べて、すぐにボートで

釣りに出発。5日間のターポンフィッシングが開始されました。



5日間でターポンは17回ヒットし、うち船べりに寄せてゲットできたのは

7尾でした。大きさはガイドによると推定70 ~ 100ポンド( 約32 ~ 45kg )との説明。

またヒットしたうちゲットできるのは平均して3割くらいとのことでした。



ロッジの客は最初の2日間は先客のロシア人のグループ6人が滞在して賑やか

でしたが、彼等が帰った後の3日間は小生一人のみ。

ロッジのスタッフによると、当時はアメリカの経済不況のため釣り客が減少している

との話でした。

熱帯雨林の広大なジャングルの中、ロッジは夜になると現地人の夜警が一人

いるのみで少し気味が悪い思いをしながら眠りにつく。そして、朝はどこから

ともなく聞こえてくる猿の鳴き声で目が覚める。そして、また釣りに出かける。

そんな日々を過ごしました。

2012年5月は、昨年の経験を生かして現地で見つけていた別のロッジを自分で

手配しての釣行でした。

ロッジに滞在中の客は東京から来たM氏と小生の二人だけ。

お互い一人旅のため毎度の食事の際は、その日の釣果や釣り談義で楽しく

長い時間を過ごして、5日間の滞在中、まったく退屈しませんでした。

M氏は、コスタリカのセイルフィッシュの釣りに造詣が深い方でした。

今回の釣果は、推定170ポンド( 約77kg )を筆頭にヒット22本、

うちゲットは14本でした。



ターポンフィッシングではよく言われることですが、2m近い白銀の巨体が

針掛りした後、全身を現して垂直に跳躍。

その後一度は簡単に船べりまで寄ってくるが、そこから身体ごと持って

いかれそうな凄まじい力で深く激しく潜行する。

そして、そのまま突っ走り、50 ~ 100m先で再びジャンプを繰り返す

闘争力に圧倒されます。

巨大な魚の力にひっぱられて船べりを伝いながら右に左に移動してファイト

するのは大きな疲労を伴う釣りでした。

魚を船に寄せてリリースした後、大息吐息で深呼吸を繰り返し、水を飲み体力の

回復に努めた後、釣りを再開する。

たまたまリリースのすぐ後に新たなターポンがヒットしたことがありましたが、

この時は腕が痺れて力が入らない。

心は楽しかったのですが、肉体には辛い時間でした。



開高 健さんの一言半句に「 魚を釣りたければコスタリカに行け。男になりたければ

ターポンを釣るんだ、諸君 」とありますが、古希の近い小生にとって今さら

強い男になりたいという願望は卒業していますが、ターポンとのファイトが強い体力

とあくなき闘争心が必要な全く異次元の釣りであることを実感しました。

< 編集後記 >

Uさんは、過去2回、ターポンフィッシングにトライしていますが

思うような釣果に恵まれませんでした。このコスタリカは、まさに三度目の正直。

釣り人が何年にも渡って胸に抱えてきた一つの夢、そしてそれを実現した時の喜び。

それがひしひしと伝わってくるようで、Uさんのターポンフィッシングを描写する

文章が私はとても好きです。

( このvol.3のタイトルはUさんが一連の文章の中で紹介されている開高 健さんの

一言半句をヒントに考えました )

私も開口 健さんの「フィッシュ・オン:第1章アラスカ編 ~ 集英社刊」の

「私は毎日、窓ぎわでウィスキーを飲みつつ(中略)、アラスカへいこう、

アラスカの荒野の川でサケ釣りをしよう、と思いつめていた」という言葉に

触発されてアラスカのキングサーモンに憧れました。

1980年代中ごろに読んだ頃から抱いた夢。それが実現したのは1997年夏のこと。

そんな自分の体験とも重なるようで、読んでいてとてもわくわくしました。

さて次回は、Uさんの直近の2013年夏 ~ 2013年の年末の海外釣り旅について

お届けします。

お楽しみに!

* ご参考:自己手配以外でUさんがご利用になった旅行会社について

ニュージーランド南島:クライストチャーチ 2005年12月

ニュージーランド南島:マタウラ 2006年12月

ニュージーランド南島:マタウラ → クライストチャーチ 2007年12月

オーストラリア:ウェイパ 2007年5月

メキシコ・ユカタン半島:イスラホルボッシュ 2006年5月

メキシコ・ユカタン半島:アッセンションベイ 2010年5月

以上が、トラウトアンドキングさん。

コスタリカ:2011年5月は、ビッグトラウトさん。


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