vol.3 シートラウト、アイスランドの旅
2016年07月18日 12:00
国土の一部は北極圏という北大西洋に浮かぶ島国、アイスランド。その面積は、北海道と四国を合せたくらいの大きさ。
また、島の位置や国名からして厳しい寒さがイメージされるが、真冬の最低平均気温は-2~3℃くらいと意外に
寒くはない。メキシコ湾から北上する暖流が島を囲むように流れているためという。
*5尾目、80cm雄を抱えて
そんなアイスランドへ2016年の4月にシートラウト( 降海型のブラウントラウト )を釣るために訪れた。
「 野生の鮭を原産地で釣ること 」にこだわり、代表的なタイヘイヨウサケ属の7種
( シロサケ、カラフトマス、ベニザケ、ギンザケ、キングサーモン、サクラマス、スティールヘッド )と
タイセイヨウサケ属のアトランティックサーモンを釣ることを目標としてきた。
それは、2014年のノルウェーの旅によって達成されたのだが、もう一つのタイセイヨウサケ属の代表種であるブラウントラウト
特に降海型のシートラウトもぜひ釣ってみたいとの思いを募らせていた。
そのチャンスは今までなかったのだが、昨年末にアイスランドでいい川があるとの情報を得て実現することとなったのである。
そして、春に遡上するシートラウトの型は大きいとの事前情報に期待がふくらむ。
だが、こればっかりは現地に実際に行ってみないことにはわからない。
そのような不確実性は海外釣り旅では普通のことだが・・・
とは言え、何とか1尾を釣り上げたい! 1~2尾か、あるいはゼロなんてこともあり得るかもしれない!?
そんなことを思うと成田から現地へ着くまでの道程ではわくわくする一方で、妙な緊張感に常に包まれているのだった。
デンマークの首都、コペンハーゲン空港近くで1泊して翌日に、アイスランドのレイキャビクへ到着した。
そこで迎えてくれたガイドのアレックさんの車で目的地へ。
*溶岩とその砂利に枯草と苔が張り付く大地が地平線まで続く。荒涼という言葉がふさわしい風景。そして、地平線の先には氷河を望む。
*荒涼とした大地を切り裂くように流れるエルドバンリバー。アイスランド本島の南端のほぼ中央に位置する、今回の釣り場だ
思いのほか暖かいと 前述したが、4月の時点ではさすがにまだ冬景色だ。
4月10日の夕刻、17時頃に宿泊先のフィッシングロッジに到着。本格的に釣りをするのは翌日の11日からの予定だったが、
アレックさんの提案で夕食前に軽く1時間くらい試し釣りをしようということに。
*エルドバンリバーの河口近くの高台にひっそりと建つ北欧調のシンプルなフィッシングロッジ
今回6日間の釣りをご一緒する私含めて4名の釣り人をアレックさんが車で一人ひとりを個別に釣り場のポイントへと落としていく。
私に与えられたポイントはNO.20、アレックさんは一言「 このポイントは、5gのスプーンがいい 」とだけアドバイスを残して、
他の釣り人を違うポイントへ案内するために車であっという間に走り去っていった。
たった一人で、NO.20の上流側の端へと歩いた。目の前に流れる大河は、川幅は200mくらいあるだろうか。
しかし、岸から30mほど先に上流から下流へと縦長に位置する長さ数十mの小さな島がある。
つまり、目の前の流れは本流から枝分かれした小さな川の様相だった。
まずは川には立ち込まずに岸から上流へのキャストを試みた。使ったスプーンは7g。
何故なら、いくらなんでも5gは小さすぎるだろうと思ったからだ。
様々な海外のフィールドでサケ科の魚を釣ってきたが、10~18gを使うことが最も多く、ミニマムでも7gまで
しか使ったことがないということもあった。
1回、2回、3回、そして4回とキャストとリトリーブを繰り返すがアタリはない。
少し悩みつつ、そこで5gのシルバーのスプーンにチェンジした。
川を知り尽くしているであろう現地ガイドの言うことを信じて。その5gの1投目で来た!!
それも、ドーンとしたかなり重いアタリだ。
水面から下約1m内で食いついてきて、ジャンプすることなくぐいぐいとルアーを川底へと引っ張っていく。
寄せようとするも何度となく反転して走っていく。ファイトはおそらく6~7分だっただろう。
*姿を見せた初のシートラウトは、体長82cmの雄。
迫力のある体躯もさることながら、魚というより獣と言ったほうがよさそうな獰猛な面構えが印象的だ。
釣り初日、しかも試し釣りのつもりで臨んだ最初のポイントのわずか5投目で目指したシートラウトの80cmオーバーを
釣ることができるとは何という幸運だろう( やや拍子抜けの感もあるが )!
1990年にアラスカへ初めてシルバーサーモンを狙いに行った際に、初日最初のポイントで釣り開始5分に60cm大を釣り上げた
ということが一度だけあるにはあったが。
私の海外釣り旅ではこのようなことはとても珍しく日を追うごとに徐々に釣れるようになってくるというのが通常のパターンだ。
翌日11日には、NO.18のポイントで70cmの雌をキャッチ。
12日以降から河口に近いNO.3というポイントが魚影が濃いことがわかり、徐々に釣果はアップ。
6日間で合計9尾のシートラウトを釣り上げることができた。以下、印象的なNO.3の風景と魚をいくつか紹介したい。
*ポイントNO.3の風景 夕暮れ
*ポイントNO.3でファイト中
*3尾目の75cm雌。もっともファイトが激しく、時間がかかった魚 12日AM11時
*4尾目の72cm雌。もっとも美しかった一尾
*7尾目の70cm雌。魚を抱えた写真でこんなにかっこよく撮れるのは珍しい・笑 カメラマンはガイドのアレックさん。さすがです
最後に欧州の釣りのスタイル、ビート制に触れておきたい。今回のアイスランドや2014年のノルウェーもそうだったが、
ライセンスさえあればその範囲内のエリア・流域を自由に釣っていいという自由の国・北米とは事情が異なる。
大自然の中を流れる大河とその周辺の土地にも個人の所有者がいることが一般的だ。( 何とも貴族社会的な事情や背景を感じさせる )
所有者の許可を得て釣りをする釣り人は、指定された川のポイント( ビート )でのみ釣りをすることが可能となる。
*川岸には、ビートの番号を示す杭が打ち込まれている。 2016.4 アイスランド、エルドバンリバー
2014年のノルウェーのオルクラリバーでは、川の場所によって所有者が異なり、私はsone6という一つの特定の
ポイント( 上流から下流まで約400mの流域 )での釣りが許可されて、6日間この場所に通ってアトランティックサーモン釣りをした。
今回のアイスランドのエルドバンリバーは、河口から20数km上流までの流域の所有者からの許可を、
フィッシングガイドを通じて得ることで釣りが可能となった。
河口付近の1番から20数番まで、上流に向かって番号プレートを掲示した杭が川岸に打たれており、
同じ期間ロッジに宿泊した数人の釣り人の間でガイドが組んだフェアなローテーションに従って釣りをしていくというものだった。
何だか窮屈な気もするが、1つのポイントを1人で占有して釣りができるという贅沢な釣りだと理解するべきだとも思う。
欧州でのサケ科のゲームフィッシングは、紳士そして富裕層の遊びとして成熟してきたという歴史があるのだろう。
完